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平川先生の小論文講座73―日本医科大学2016年度―

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[今回の過去問]
日本医科大学2016年度 目標60分

再生医療が注目を集めている。下の写真は、ネズミの背中で再生したヒトの耳である。再生医療について思うことを600字以内で述べなさい。
(原文には、「背中にヒトの耳を再生したネズミ」の写真が図示されています。編集の都合により、省略しました)

【これまでの話】
最近、話題の再生医療を扱った日本医科大学の問題検討、3回目です。

[第72回]

「出題意図には、細心の注意を払って」

A子 「今週も、よろしくお願いします」

平川先生「こちらこそ。前回、『再生医療』について、問題点の整理もできたので、答案を書いて
    てもらいました。おおよその事柄については、押さえられていましたが、原文の『背中
    にヒトの耳を再生したネズミ』について、触れられていませんでした。
     今回は、この耳の写真についての出題者の意図を考えます。その上で、答案を完成さ
    せましょう」  

A子「はい、正直『ヒトの耳』が生えているネズミの写真は、グロテスクです。今の科学技術は、
  こんなことまでできるのかと、思いました」

平川先生「そうですね。『再生医療』では、ヒトの受精卵を使う場合があります。そこで、場合
によっては、ヒトとしての萌芽(芽生え)を人為的に改造する『化け物』を作り兼ねない、
その危険のある技術ということを、出題者は訴え、受験生の意見を聞きたいのでしょう。
科学技術の発達は、誰のため、何のためという目的を失ったら、とんでもない化け物ま
で、作りかねない段階に来ています。A子さんは、どう思いますか」

A子「えっと、『再生医療』は、臓器提供者を前提としない分、他者の生命の犠牲はありません。
  しかし、一方で、医学というものが、ヒトそのものを変えてしまう危険がある、そんなこと
  を感じました。あっそうか、今、私が言ったことを文に入れればいいですね」

平川先生「そうですね。ピントが合えば、試験なんて簡単でしょ」 

A子「そうか、本当に(大事なことが、分かったように、パッと顔が輝く)。早速、書き直しま
  す」
(しばらくして、以下がA子さんの書いた答案です)

 再生医療とは、患者自らの細胞を再生して、病んだ部分を治癒する方法をいう。
 臓器移植は、あくまで提供者の『死』が、前提である。それに比べて、病人自身の細胞を使って対処するこの治療法は、安価で安全性も高い。将来的には、日本国内ばかりでなく、海外でも広く普及することが予想される。経済的に、大きな発展が見込める画期的な療治手段である。
2014年以降、政府もiPS細胞の研究を中心として、再生医療で世界をリードしようと、まず整形外科の分野で、骨折や軟骨の治療などで進めている。
もっとも、問題がないわけではない。再生医療が今後、大きく発展する上で乗り越える課題が2つある。
第1は、自身の細胞を使うということで、例えば患者がガンだった場合、再生した細胞を使っ
たとしても、もともと病気になりやすい遺伝子があり、体質的に発病しやすい。病人自身の組織である以上、同じ病気が再発する可能性が高いということである。
第2に、実験には、人の受精卵を使う場合もある。そこで、再生の研究により人のあり方まで変えることになるのでは、という指摘がある。そのよい例が、設問文に提示されている『背中にヒトの耳が生えていいるネズミ』の写真である。再生医療は、ヒト自体の細胞を活用する故に、意図的な人体改造につながりかねない危険がある。
 したがって、この治療法は、今後の研究が期待されるとともに、人道的見地から慎重に進める必要があると、考える。(598字/600字)

平川先生「なるほど、今度はしっかりと出題の意図に応えようとしていますね。自分なりの言葉
    で書かれています。合格です。
書き直しの時間も、ほぼ10分ほどでした。スピーディーです。
     本番に向けて力が付いてきましたね」

A子「ありがとうございます。褒めていただいて、うれしいです。」

平川先生「では、ちょうど区切りがついたので、今日はここまでとしましょう。
    次回は、杏林大学・医学部2014年度『学校や職場における“いじめ”について、あなたはど
    のように考えるか、800字以内で述べてください。60分』です。決して、他人事には、で
    きない問題です。医療という面からどう捉えればよいか、検討していきましょう。   
    来週も、お楽しみに!」

【今回のポイント】
「過去問の検討を通して、重要な論点の理解を広げていく」
 今回は、「再生医療」という医学の最先端の問題を取り上げました。
専門的なことなので、高校では習いません。しかし、今日の医療の課題である以上、医学部・小論文では、出題する大学が当然、予想されます。
過去問の検討を通して、問題点を理解し、答案として残しておけば、入試直前期の重要事項としてチェックができます。予想問題としての対策にもなります。
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