受験生に送る言葉

平川先生の小論文講座62―横浜市立大学(医学部医学科)2007年度―

 

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2019/06/06 (木) 16:00
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[今回の過去問]
横浜市立大学(医学部医学科)2007年度 目標60分

臓器移植と生命倫理について、具体的な事例を挙げながらあなたの考えを1,000字以内にまとめて述べなさい。

[第62回]

「完璧な答案を目指す」

A子 「よろしくお願いします」

平川先生「こちらこそ。さて、医学部入試が終わってから3ヶ月が過ぎました。
A子さん、新しい環境に少しは、慣れましたか」

A子「ええ、最初は高校を卒業して、もう仲のよい友人達とも会えない。自分だけが、来年の医学
部再受験と、何か取り残された思いがしていました。でも、4月から通いだした予備校で、同
じように医学部を目指す友人ができました。『よし、来年こそは』、という気持ちが出てき
ました。少し、落ち着いたと思います」(にっこりと、微笑む)

平川先生「そうですか、それはよかった。来年の入試までは、まだ時間があります。医学部受験
は、長丁場です。焦らず、まずは足元から確実に固めるつもりでいきましょう。
では早速、前回課題に出した答案構成の検討から、始めましょう」

A子「はい。設問文が、臓器移植と生命倫理について、具体例を踏まえて自説を述べることを指
示しています。そこで、答案の柱としては、まず①臓器移植とはどういうものか、定義を述
べます。その上で、具体例として現状を挙げます。
次に、②問題点として、生命倫理との関係を指摘します。臓器提供は、『死』を経て初め
て可能な治療法なので、人の『死』をどう考えるのか、『死亡』時期が問題となります。
最後に、③今後の課題として、iPS細胞等のような再生医療の発展を述べます」

平川先生「そんなところでしょうね。では、答案を書いてみましょう」

A子「はい、では書きます」

(しばらくして、以下がA子さんが書いた答案です)

1、臓器移植について
臓器移植とは、手術によって他から同じ臓器や組織を移植することをいう。臓器の提供は、移植でしか回復の見込みのない病人にとっては、唯一の望みである。しかし、臓器移植は、病気や外傷によって損なわれた臓器や組織の機能を、他の人のもので代換させる。
そこで、臓器移植は、提供者である人の「死」をどう捉えるかが問題となる。

2、「死」をどう考えるか
現実に生きることを第1とする考えの強い欧米社会では、人の「死」は比較的、冷静に受け止められ、「死」は脳の機能の停止をもってするという考えが定着している。そのため、臓器提供は、早くから治療の一つとして、社会に受け入れられた。アメリカでは1年間でおよそ25,000件と日本の約80倍の規模である。これに対して、臓器移植に関する理解が進んだといっても日本は、年間300件程度にとどまる。
死後の世界を考える倫理観、日本独特の生命倫理観のため、我が国では長い間「死亡」時期については、慎重な姿勢が続いた。国内での移植困難な特に未成年の患者は、海外での移植を余儀なくされた。欧米のマスコミからは、「日本人は、金で外国から臓器を手に入れている」等の厳しい批判を、長い間浴びてきた。
近年やっと臓器移植の重要性が高まり、脳死をもって、「死」の時期とする考え方が浸透しだした。
2010年7月には、改正臓器移植法が全面施行され、生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合に加え、本人の臓器提供の意思が不明な場合も、家族の承諾があれば臓器移植できるようになった。これにより、15歳未満の方からの脳死後の臓器提供も可能になり、誰もが最期を迎えたときに、他の人の命を救うことができるようになった。子供*からの移植も行われるようになった。 *〈注〉本来は、「子ども」と表記すべきだが、字数の関係で「子供」と表記する。
今年、4月にも6歳未満の女の子の臓器が、10歳未満の複数の子供に移植されたとの報道があった。新聞の投書欄にも、臓器を提供した家族からの「子供はなくなってしまったが、別の人の命を救ったことで、今も生き続けてくれていると思うと、救われる」との投書が掲載されていた。
我が国でも、徐々に臓器の移植が、治療の手段の1つとして受け入れられ始めていることが、分かる。
3、まとめ
もっとも、臓器移植には重大な課題がある。それは、あくまでも治療のためとはいえ、亡くなった者の臓器を必要とするという点だ。誰かの死が前提ということである。欧米の一部、東南アジアの一部の国では、臓器移植がビジネス化し、犯罪組織ともつながっている。
人の命を尊ぶという生命倫理観からは、一刻も早くiPS細胞等の再生医療のような根本的な治療法の確立が望まれる。(983字)

平川先生「はい、おおむね整理されていると思います。ただ、設問が『臓器移植と生命倫理』と
の関係についての『あなたの考え』を聞いているのです。この点が、少し整理されていま
せんね。当面は移植で対応して、将来的には再生医療に、という筋立ては間違いではあり
ませんが、生命倫理との関係で移植をどう考えるか、という出題者の問いかけには、
今一つ弱いと思います」

A子「はい、確かにそうですね。十分に議論していません」

平川先生「ところで、A子さん、生命倫理とは何ですか」

A子「えっと、なんだっけ。命を尊ぶことと、私は考えましたけれど」

平川先生「はい、それでもいいでしょう。高校での勉強で出てくるような言葉ではありません。
知らなくて当然です。
生命倫理とは、生と死に医療がどう関わるべきかの考え方をいいます。体外受精( 生殖
補助医療技術)、遺伝子(遺伝子診断、遺伝子治療)、生命維持等の生命科学技術の場で、
受精から死まで医療が操作する機会が増え、人の生と死をどう考えるか、医療現場の悩
みも増えていることから、近時重要視されるようになった事柄です。
本文でいえば、移植が人の生と死にどう関わるか、考えてみようということです」

A子「生と死と、どう関わるかということですか。そうですね。その点は、きちんと述べて
いませんね」

平川先生「ええ、せっかくの機会です。よりよい答案作りは、来年の合格につながります。
もう一度、整理して書き直しましょう。完璧な答案を目指しましょう。
では、そろそろ、時間になりました。来週までに、答案を準備しておいてくださ
い。
新しい環境にも慣れてきたようですし、これからが勝負ですよ。
自分が医師になったつもりで、今回の問題を書いてみてください」

A子「はい、分かりました。(にっこりと笑う)今日はありがとうございました」

平川先生「こちらこそ、ありがとうございました。来週もお楽しみに」

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「完璧な答案を作成することは、本番への最良の準備」

「せっかく書き上げたのに、書き直すなんて」と思わないで。完璧な答案作成こそ、本番までの最良の準備なのです。じっくり考えるのは、今この時期だけです。
どうやったら、出題者の題意に応えることができるか、考える。
この訓練を通してこそ、本番の限られた時間内に、今回の答案のような1,000字という比較的長い答案を書けるようになるのです。
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