受験生に送る言葉

平川先生の小論文講座⑮


夢を抱いて、実現する君よ!

本日は、平川先生の小論文講座第15回目をお届けします!

[設問]浜松医科大学(医学部医学科)2009年度  80分 750〜800字

「山本周五郎の代表作の1つに『虚空遍歴』という作品がある。その最後の場面で、主人公の中藤中也が死ぬ前に、夢の中の祖父の言葉だといって、付きそうという女性に語りかける次のようなことばがある。
‥‥‥死ぬことはこの世から消えてなくなることではなく、その人間が生きていた、という事実を証明するものなのだ。死は、人間の一生にしめ括りをつけ、その生涯を完成させるものだ。消滅ではなく完成だ。
この作品が書かれたのは、1961年から63年にかけてのこと、日本は高度成長に浮き足立ち、多くの日本人は病いや死のことなど考えもせず、ひたすら生の欲望を無限に追求することに狂奔していた時代であった。
それから30年、高度成長の申し子としての高度医療の達成を背景に、高齢化社会と慢性病の時代が到来し、私たちはだれもが病や死と否応なく向き合わざるを得ない時代を迎えた。(以下、略)」
(立川昭二『生と死の現在』142ページ 岩波書店、1995年より)

下線部に書かれているように 死が完成だとすると、医療はそれにどう関わって行くべきなのか。あなたの考えを750〜800字で書きなさい。

[これまでの話]
前回で、『死』についての意義と、そこから『生命の質』の問題と、『生命の量』の問題が導かれることを確認しました。今回は、いよいよ文章の完成です」

[今回(15回目)] 「命の尊さについて考える」

平川先生「これまで3回にわたり、浜松医科大学の2009年度の問題を検討してきました。『死』について、人生観、価値観に関わるような深い洞察を求める出題でした。
今から、A君に、この課題を書き上げてもらいます。その前に、おさらいとして、もう一度、答案構成を言ってもらいましょう」

A君「はい、分かりました。
まず、
1,『死』とは、どういうものか、その定義を書きます。その上で、設問文を踏まえて、今日、人の命の最後の場面と、どう向き合うかが、医療の課題となっていることを記述します。
次に、
2,『あなたの考え』に関し、医療の関わり方を述べます。
その上で、
⑴として、『生命の質』の面について、患者の自己決定権について考察します。
⑵として、『生命の量』の面について、延命の課題を考えます。
『安楽死』と『尊厳死』の問題です」

平川先生「了解しました。それでは、答案を完成させてください」

[しばらくして、
以下、A君の書き上げたものです]
1、死の意義
死とは、生物の生活機能が停止することをいう。
今や人口の4分の1以上が、65歳以上という高齢化社会である。そして、高齢による慢性病の時代に入った。もはや、高度経済成長時のように、「ひたすら生の欲望を無限に追求することに狂奔」することは許されない。死とどう向き合うかが、今日の医療の大きな課題となっている。
2、医療(医療関係者)の関わり方
死は、いずれは誰もが迎える事である。決して、避けられない。そこで、私は、医療は、その人らしい人生の最後を飾ることができるように、人の生命の質(QOLの質の側面)と量(QOLの量の側面)の二面におてサポート役として関わるべき、と考える。
⑴まず、主に生命の質において、①患者の自己決定権を尊重し、自身の体の状態についての正確な情報を提供する。ただし、高齢者の不安定な精神状態や、認知症などに罹っている場合は必ずしも、本人に伝えても、理解が難しい場合も多い。少なくとも家族には、正確な情報提供を行う。これにより、家族と医療スタッフが協力し合うことができる。その結果、患者が最後まで落ち着いて過ごせるようになる。②そして、正確な情報のやり取りをもとに、持続的なケアをして、最後の時まで、安らかに過ごせるように対処する。③また、終末期には、肉体的苦痛や精神的苦痛が生じる場合が多い。これらに対処するような緩和ケア、在宅医療の体制を確保する。
⑵次に、主には人の生命の量的な面のサポートとして、安楽死と尊厳死がある。安楽死とは、延命のための治療を中止したり死期を早める処置をすることをいう。それに対して、尊厳死とは、人為的な延命措置を中止し、人としての尊厳を維持したまま死を迎える事をいう。人によっては、生き続けることよりも、あえて死を望む者もいる。自己決定権に基づく患者の選択肢の一つとして今後、検討する課題と考える。(778字)

(注)QOL(クオリティ・オブ・ライフ\Quality O f L ife)とは、人々の生活を物質的な面からのみ、
見るのではなく,精神的な豊かさや満足度も含めて,捉える考え方をいう。

平川先生「定義を踏まえ、人の命と医療との関わりをよくまとめています。
合格答案です」

A君「ありがとうございます。先生が、この小論文講座の最初におっしゃていた、論理的思考が、少しずつ分かってきました」

平川先生「そうだね。筋道を踏まえた考え方になってきたから、文章の流れもよくなっている。読みやすくなったよ。
これで、今までやった慶應義塾大学、杏林大学、信州大学の各大学・医学部についての小論文と、今回の浜松医科大学の文章で、試験に出そうな論点と、その表現の
しかたの大まかなところは、押さえることができました。
次からは、さらに、今後出そうな重要な点について勉強を進めていきましょう。
次回は、近畿大学医学部の2009年度・後期試験で出された、
『医療崩壊の社会構造と解決策』について考えてみます。ご期待ください」


[本日の講義のポイント]
「論理的思考が身に付くと、文章の流れがよくなる」
医学部•小論文について、勉強することは、論理的な思考力を身に付けていくことでもあります。
その結果、筋道立った考え方で記述されているので、
書かれた文も読みやすくなります」

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